GearBest等の中華系ECと日本のECとの違いについて

あなたがもし中華系ECで初めて買い物をするつもりなら、それは市場に初めて来た観光客と同じだ。郷に入っては郷に従えと言うとおり、今から入る市場の常識を知らなければならない。
カモられるかも知れないし、逆に店に迷惑を掛けるかもしれないし、行き違いでお互いが不幸になるかもしれない。

5,000文字近くあるが、中華系ECに限らず海外通販を行う気が少しでもあるのなら読む価値がある。
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ポイント

GearBest等の中華系ECと日本のECとの違いのポイントとして以下の3つに触れる。

  • 日本人の商売倫理からすると「ありえない対応」がある
  • 個人輸入は契約と交渉が大事
  • それでもやってみる価値はあり、あなたの未来にきっと活きる

日本人から見たら「ありえない」対応がある

GearBest等で中華系ガジェットを買うと、そこそこの確率で「ありえない」対応に当たる。

「不良品を意図的に送って来る」・「返品交換に応じない」・「中古品を意図的に送って来る」などだ。
日本でやったら一発アウト、悪評が広まりまともに商売を続けることが出来なくなるだろう。だが、彼らは平気で行う。

客としてはいい迷惑だ。高い金を支払い3週間も4週間も待って、ガラクタが届く。まともな商売には思えない。

だが、これは彼らにとってはまともな商売なのだ。

例えば2万円のタブレットを売り、ガラスの縁が欠けていると返品されたらどうするか。
彼らは返品された商品を別の客に送る。まぁ、多くの場合また返品で戻ってくるだろうが、中には返品が面倒でそのまま使う人もいる。
仕事ですぐ必要かもしれないし、翌週親戚一同の集まりで自慢する為に買った人も要るかもしれない。急ぎで必要な人は何割か確実にいる。返品時の送料を客が負担することも要因の一つかもしれない。(中国だけでなく、返品時の送料を客が負担するのは一般的)
結果、いつか売れる。

返品に応じないケースも同様だ。

「We wish to apologize for ...」と長文のメッセージが来るが返品には応じないケースがある。これは特に日本人に多いのだが、長い英文メッセージの応報に耐え切れなくなり、最終的には譲歩する人間が少なからずいる。
結果、返品はなくなり再送のコストも不良在庫も消え、CS(お客様サポート)の評価は上がる。

中にはどう考えても実用に耐えない不良品でも返品を断ってくる場合がある。それは、クレームのメッセージ英文が稚拙で舐められているからだ。
CS担当者の気持ちになってみよう。
「すまほがめんがいろがおかしいとどいた。つかうむずかしい。あたらしいおくってほしい」ときたら、
「この度は弊社をご利用いただき、誠にありがとうございます、お問い合わせいただきました件に付きまして弊社社内技術部に問い合わせ……」と、慇懃な長文でケムに巻いてやれと思う気持ちも分かるだろう。

他にもサポートとのやり取り期間を伸ばして返金保証期限を超えてくるというケースもある。

とまぁ、ここまでまとめてみて「最低だな…」という言葉しか出てこない訳だが、それでも筆者はそれを理解した上で使っている。英語だって大して上手くないのにだ。
それは次のポイントでもある契約と交渉で解決出来ることが多いからだ。

個人輸入は契約と交渉が大事

日本国内の商習慣では「常識」と「思いやり」が大事だ。
例えばボケた老人が騙されて良くわからないまま高額の契約をさせられたら、「常識」と「思いやり」を欠いた事業者は大きな報いを受けてしまう。
だが、個人輸入を含む国際的な商取引ではそうではない。「契約」と「交渉」が全てだ。

これは「中国人だから常識がない・思いやりがない」「日本人は優しい」と言っている訳ではない。

世界のどこでだって、地元の人に愛されて成り立っている商売では、常識と思いやりを大切にしている。
しかし客のほぼすべてが初見・遠隔の人間である観光地などでは、詐欺・詐欺まがいの商法が跋扈し、信頼してはいけない人間を信頼して騙されたら、それは騙された人間がバカなのだ。

個人輸入も同様。自分の意図と違う方向に行った時に守ってくれるのは「契約」だけだ。そして、そもそも意図と違う方向に行かないようにするためには「交渉」が必要だ。
上手い交渉には2つのメリットがある。1つは交渉の主目的である「自分の主張を通せる」こと。2つめは「以後、舐められなくなる」ことでこれが功を奏すと以後は交渉の必要がない程相手がベストを尽くすようになる。
日本人は交渉が下手だ。300万円の結婚式をするのに、1円の値切りもしない。提示された金額は支払って当然だと思っている人ばかり。
そんな人間は他国の人間からしたら「カモ」でしかない。

ここで交渉術を説くつもりはないが、交渉の下手な日本人が交渉する一つのコツとしては、「平気で嘘と不誠実を使ってくる相手」だと認識して、「証拠のないものは何も信じず、喧嘩するつもりで臨む」くらいでちょうどいいだろう。

「相手も同じ人間。誠意で話せば話が通じる」で済むのは日本だけだ。

契約についても、よく読み、納得しなければ何も支払ってはならない。

例えば契約書に「製品が届かない場合がありますが、諦めて下さい」とあったとしよう。
「契約上こうなってるけど、流石にこんなひどい扱いしないだろ。」と考えてはいけない。それは現実になる。そう契約書に書いてあり客がそれに同意したのだから当然で、同意した客がバカなのだ。

逆に契約を逆手にとって状況を有利にすることも出来る。相手が返金に応じない場合、支払いに使った決済代行会社の契約に基いて強制返金させるなど。
強制的な返金手段の確保という意味で、現時点ではPayPalを支払いに使うのが賢明だろう。

それでもやってみる価値はあり、あなたの未来にきっと活きる

ここまで読むと、「良いことないじゃん…」となるはずだ。「リスクしかない…」と気付くだろう。
それは正しい。はっきり言って何かが欲しいだけだったら、GearBestを始めとした中国ECサイトから何かを買うのはオススメしない。
時間と金の無駄になる可能性が高いだけでなく、舐められてイライラした日を過ごすので、精神的にも良くない。

結論、何か物が欲しいだけだったらAmazonで買ったほうが良い。無知なままでも良い物が欲しいならジャパネットたかたのTVショッピングで買ったほうが良い。
(Amazonとジャパネットたかたは本当に良いECサービスだと思う。)

それでも、きっと「買ってみたい」と思う人はいるはずだ。
決して勧めはしないが、「買ってみたい」と言う勇気ある人は全力で応援する。なぜならその勇気に応える以上の価値はあるからだ。

GearBest等の海外通販を通じてしか得られない価値は以下の4つ。

  • 日本にない、超お得な商品が手に入る
  • ガジェット・電子機器の本場から直接物が買える
  • 交渉を通じて、海外との商取引に慣れるのに丁度良い
  • 正直で優しく疑うことをしない日本人を卒業できる

「1 日本にない、超お得な商品が手に入る」については、商品ラインナップを見てみれば分かる。

スマホやタブレットなど、日本の市価に比べて著しく安い。同スペックの品が安いだけでなく、下手したら同じブランドの同じ製品でもかなり安く手に入れられる。
もちろんその理由がある。日本のメーカー・販売店が利益を乗せて売っているのに中国の企業が利益を乗せずに売っている訳ではない。
日本で売られているものは、ある種過剰とも言える検証・検品・審査のクリアをして初めて市場に並んでいる。中国新興企業の製品の多くに、それはない。
そのため、高性能なCPUとメモリを積んでいるにも関わらず、「常に冷やしながらじゃないと電源が落ちる…」などといった製品もある。
それでも、用途や環境にマッチすれば極めてお得ということには違いはない。

「2 ガジェット・電子機器の本場から直接物が買える」については、中国が「世界の工場」となった今電子機器の本場は中国であり、そこから直接物が買えるというのはメリットだ。

日本人は未だに「日本の町工場の◯◯が有名製品に使われている」と得意げになっているが、工業製品のメインどころであるCPU・メモリ・HDD・SSD・液晶・光学機器・基盤・組み立て……それらの殆どは中国に大惨敗している。
中国の大工場が採算性がないと見て進出しないニッチな領域でだけ、日本の技術が残っていると言っても過言ではない。
例えば、職人の手仕事の代表とされていた「金属の磨き」技術。これは暫く日本の職人の独壇場だったが、Appleが製品に取り入れてこの技術に収益性が期待された瞬間、中国はコストを抑えた大量生産体制の構築に成功している。
もはや秋葉原の電気街には(世界的に見れば)高価なブランド品と、中高年向けの骨董品じみた電子パーツがほとんどであり、日本を「技術立国」と思っているのはテレビの前のおじいちゃんおばあちゃんだけだ。
中国のガジェット・電子機器の流行りや価格動向をウォッチし続けるだけでも刺激を受けられるだろう。

「3 交渉を通じて、海外との商取引に慣れるのに丁度良い」については、何度か購入をしていると、きっと返品や交渉する機会が生まれる。

その機会自体を是非楽しんで、そのやり取りを通じて成長して欲しいと思う。
中には、将来会社の仕事で海外の工場から数億円のものを仕入れなければならないという人もいるだろう。
そんな時、少額でもやり取りの経験があり、さらにトラブルの経験もあると全然違う。
日本での取引しか経験していないような、上司や同僚から非常に頼られることだろう。
「これは相手嘘ついてますね、ガツンと言いましょう!」と言う判断が出来るなら、100ドルは非常に安い投資だ。

一度トラブルになれば、CSともメッセージのやり取りを3〜5回はすることになる。実際の金銭をかけたメッセージのやり取りは、時に数冊の教科書よりも成長させてくれる。

「4 正直で優しく疑うことをしない日本人を卒業できる」については、「そんなの卒業する必要なくないか?」という声も聞こえてきそうだが、これは必要だと考えられる。

日本に限らず、世界は今ボーダーレスに向かって動いている。
政治状況等により一時的に逆行することはあるだろうが、ロジスティックの発展によってそれまで分断されていた社会が交じり合うというのは、歴史を振り返っても避けられない自明の真理だ。
ボーダーレスになり様々な国・信仰・種族の人間が交じり合った時、「正直で優しく疑うことをしない日本人」は生き残ることができない。

なぜなら一見すると美徳に見えるが、「相手の善意に頼り、自分で考えない」という欠点でもあるからだ。
もちろん良い面・悪い面両方の側面を持っているのは間違いなく、今の日本では信義に背いた人間には日本人の「同調圧力」による様々な罰が用意されているので、このままでも困ることはない。
だが、日本が国際化した時には今の日本に比べて騙すことへのインセンティブが非常に強くなり、自衛しない者のケアを社会が担うことはできなくなるだろう。
社会によって守られていた「相手を信じる良い人」は、誰にも守られなくなるのだ。

相手の善意を前提として自分で考えられない人間は国際社会では騙されて当然のカモであり、そのカモを素晴らしいと言う人はおろか、同情する人さえいなくなる。

中国ECを使うことで、そんな国際社会の荒波を少しでも経験することになるだろう。

こう言うと少し大げさだが「未来の日本を一足先に体験出来る」機会だとも言えるだろう。

以上、色々警戒しつつもこの4点が得られる中華系ECを是非楽しんで欲しい。

  • 日本にない、超お得な商品が手に入る
  • ガジェット・電子機器の本場から直接物が買える
  • 交渉を通じて、海外との商取引に慣れるのに丁度良い
  • 正直で優しく疑うことをしない日本人を卒業できる

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